公共性 (思考のフロンティア) の感想

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参照データ

タイトル公共性 (思考のフロンティア)
発売日販売日未定
製作者齋藤 純一
販売元岩波書店
JANコード9784000264297
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治学

購入者の感想

 120頁と短い本ではある。しかし、読者の思考を促進し、容易に読み進める事を立ちどまらせる本でもある。本書は、政治思想史家、齋藤純一の公共性論であるが、「思考のフロンティア」というシリーズ名に相応しい一冊となっている。

 第1部では、本書の主題「公共性」を近年の「公」を巡る議論の中に投じ、公共性を共同体と比較して、「開かれている」こと、「複数の価値」が生成し、「人びとの間にある事柄」への関心が保たれ、「一元的・排他的帰属」を求めない空間と規定する。第2部では、公共性論の古典から現在的な課題に向い、1章でハーバマス、2章でアーレント、3章でアーレントの捉え損ねた社会国家における生命の保証という課題を提示し、4章で公共圏と対立するものとしても捉えられ易い親密圏の、公共圏への転換可能態として両義化し、その可能性と課題を提示、5章では個人と共同体という分析概念に対し、自己と公共性の複数性という視座を問う。第3部は本書で準拠した文献や必ずしも触れられなかった重要な文献案内であり、著者の判断の裏側にある蓄積も見える。

 欲を言えば、基本的な登場人物には、その著作の時代背景と参照させながら読むために、生没年や原著出版年、また和雑誌からの引用には、出版年もつけて欲しかった。また内容面でも、個人と共同体という近年の法哲学の文脈に、自己と公共性の負の側面を押し込んだ、という側面はある(少なくとも社会学では個人は共同体と組みになり難い)。

 けれども「思考のフロンティア」シリーズの一冊として、読者をフロンティアに誘いつつ、更なる思考(原著)に導こうという目論みは十二分に果たしえている。

 私自身は特に、近年の法哲学の議論を紹介した後、アマルティア・センを介して、1880年代に成立した社会国家が1970年代に変容した議論につなぎ、今日の監視社会論の課題へと導いた第2部3章が参考になった。

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