カウントダウン・メルトダウン 下 の感想
参照データ
タイトル | カウントダウン・メルトダウン 下 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 船橋 洋一 |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784163761602 |
カテゴリ | ジャンル別 » 科学・テクノロジー » エネルギー » 核・原発問題 |
購入者の感想
上下巻ともに読んだ上での感想。
福島第一原発事故についてはいくつか良書が既に刊行されているが、その中でも質量ともに圧巻を誇る。
原発事故への対応については、米国内部でも意見対立があった事や、米軍も情報不足のためヒステリー
気味であった事が詳細に書かれており、このあたりは著者のもっとも得意とする分野だけに、非常に
緊迫感があった。
また、文科省と経産省との駆け引きの結果、政府への助言機関に過ぎない原子力安全委員会が事故対策
の前面に立たされた(らしい)ことなどは、今まであまり報道されてこなかったのではないか。
加えて、今回の事故では、いくつか「幸運」が重なったことについても改めて感じた。
重要免震棟があった事。福島第一第二原発ともに、現場の指揮官の能力が高かった事。人格者ではない
が、「意志」を貫徹する人間が首相だった事。また、その補佐に当たった政治家(細野、寺田、北澤氏
等)が、比較的有能であった事。自衛隊が実動部隊として機能し続けた事。
概ね海側に風が吹いていた気象条件も、僥倖というしかない。
そして、恐らく最大の幸運は、4号機の燃料プールに何らかの原因で炉内の水が入った事だった。
恐らく、これらの一つでもかけていれば、我々はまったく違った時間を生きていただろう。
それにしても、東電も含めた行政官庁の対応は一体なんなのだろうか。国家体制どころか国土の半分
以上を毀損する恐れすらある中で、ほとんど致命的となりかねない遅滞を繰り返した挙げ句に権力闘争
に明け暮れる様は、もはや醜悪という言葉すら似合わない。
このように原子力関係機関が主体性を失って責任をなすり付け合っている以上、政府主導で物事の解決
に当たるしかなかったのが真相と言えるのだろう。菅直人首相以下政府要人たちは、暴走寸前の原発に
対し、実質的に自分たちで組織やルールを立ち上げるところから始めなければならなかったのである。
皮肉な事に、彼らは否応なく「政治主導」を発揮するほかなくなっていた。
福島第一原発事故についてはいくつか良書が既に刊行されているが、その中でも質量ともに圧巻を誇る。
原発事故への対応については、米国内部でも意見対立があった事や、米軍も情報不足のためヒステリー
気味であった事が詳細に書かれており、このあたりは著者のもっとも得意とする分野だけに、非常に
緊迫感があった。
また、文科省と経産省との駆け引きの結果、政府への助言機関に過ぎない原子力安全委員会が事故対策
の前面に立たされた(らしい)ことなどは、今まであまり報道されてこなかったのではないか。
加えて、今回の事故では、いくつか「幸運」が重なったことについても改めて感じた。
重要免震棟があった事。福島第一第二原発ともに、現場の指揮官の能力が高かった事。人格者ではない
が、「意志」を貫徹する人間が首相だった事。また、その補佐に当たった政治家(細野、寺田、北澤氏
等)が、比較的有能であった事。自衛隊が実動部隊として機能し続けた事。
概ね海側に風が吹いていた気象条件も、僥倖というしかない。
そして、恐らく最大の幸運は、4号機の燃料プールに何らかの原因で炉内の水が入った事だった。
恐らく、これらの一つでもかけていれば、我々はまったく違った時間を生きていただろう。
それにしても、東電も含めた行政官庁の対応は一体なんなのだろうか。国家体制どころか国土の半分
以上を毀損する恐れすらある中で、ほとんど致命的となりかねない遅滞を繰り返した挙げ句に権力闘争
に明け暮れる様は、もはや醜悪という言葉すら似合わない。
このように原子力関係機関が主体性を失って責任をなすり付け合っている以上、政府主導で物事の解決
に当たるしかなかったのが真相と言えるのだろう。菅直人首相以下政府要人たちは、暴走寸前の原発に
対し、実質的に自分たちで組織やルールを立ち上げるところから始めなければならなかったのである。
皮肉な事に、彼らは否応なく「政治主導」を発揮するほかなくなっていた。