はじまりの記憶 杉本博司 [DVD] の感想

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参照データ

タイトルはじまりの記憶 杉本博司 [DVD]
発売日2012-04-27
監督中村佑子
出演杉本博司
販売元角川書店
JANコード4988126208516
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドキュメンタリー

購入者の感想

 世界的に大きな評価を得ている現代美術家、杉本博司。注目すべき数々の作品を生み出す杉本の本質に肉薄することを試みたTVのドキュメンタリー番組(WOWOW)を、発展的に再構成し映画化した作品(83分)のDVD版である。
 結論から言えば作品は、表現者、杉本博司を丸ごと捉えることに、かなりの程度に成功している。200日にも及ぶ密着取材で、対象に丁寧に寄り添う姿勢(中村佑子監督)と、決して過剰にはならない音楽(渋谷慶一郎)の美しさも加わって、杉本博司という存在を理解する上での、恰好のテキストとなっている。

 映像はまず、杉本の最近のテーマ、<放電場>の制作プロセスをじっくり見せる。この感光材に直接放電することで創られる偶然性の強い写真は、2010年のシドニービエンナーレでの、古い発電所全体を使っての、電気を介しての自然と人類の関わりについての壮大なインスタレーションへと展開する。
 のみならず杉本は、大きな注目を集めるコンセプチュアルアートと呼ばれる作品群。具体歴には写真シリーズである<海景>、<ジオラマ>、<ポートレート>、<劇場>。彫刻作品の<観念の形>。さらにはあり得る歴史の可能性としての直島の<護王神社>の再建プロジェクトなどなど、ある時はニューヨークの自らのスタジオで、ある時は制作現場で、ある時は日本の各地で、饒舌なほどに自らの作品を語る。
 そこで語られる作品の本質とは、何かを真実と感じる個人の感覚など排除した、物事の本質そのものを、この場に提示すること。永遠をこの一瞬にとどめることなのだ。
 そんなアートを行なうことの意義について、杉本はこのように語る。後期資本主義の只中を生きる私たちは、もはや理想というような、信ずべき何ものかを失っている。そんな人々に自然との関係にしろ社会の理想にしろ、精神の拠り所を再び取り戻す、その一助となることがアートの役割なのだと。すなわち、私たちが自らの本質として持つ何ものかを、直感的なかたちで、目の前に提示することが、芸術の仕事なのだと。

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