評価と贈与の経済学 (徳間ポケット) の感想

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タイトル評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)
発売日販売日未定
製作者内田樹
販売元徳間書店
JANコード9784198635671
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

経済学の本ではない。いまの日本における個人の価値観や生き方についての時論。内田樹の言う「贈与経済」とは、誰かが贈る(パスを出す)ことでそれを受けた人間が反対給付義務を感じて別の人にまた贈与をするというサイクルがまわっていく経済のありかた。岡田斗司夫のいう「評価経済」とは、個人の評価が周囲に知られることで、評価にもとづいて仕事やお金のがあとからやってくるという経済のまわりかた。これって似てるよね、どこかでつながっているよね、というところからたぶん始まった企画。

少子高齢化で経済成長しなくなると手持ちのものをうまい具合に分配することで、みんなそこそこ豊かに幸せに生きていける、というのが内田論。その分配の仕方においては贈与を基本にするのがベストだという。この贈与経済の効率を上げるのがインターネットだと岡田は指摘する。ネット上に個人のやってきたことやそれに対する評価が蓄積されるので、お金というメディアをつかわずとも直接しかるべき人とモノなり情報なり交換できるという話である。つまり贈与先を決める際の時間とコストが激減するという理屈だ。それはわかるが、贈与経済については「もう『贈与しかない』」「贈与は『贈ったもの勝ち』と所与のものとして話しが始まっているので、よくよく考えると腹落ちしない。贈与を受けたので、反対給付義務を負ったと思った人間の出現と同時に経済活動が始まった……というのも、そういう面があることは否定しないが、それを貨幣経済が空気のようにいきわたった現代の文脈に簡単に当てはめていいものか。

贈与経済と評価経済こそが答えだという話は刺激的で面白いけれど、貨幣経済へのカウンターにはならない。誰もが「こいつにはパスを出したい(お金・モノ・無形の支援などをあげたい)」と思えるような人として評価を受けているわけではない。富める者はもっと富み、貧しい者はもっと貧しくなるという貨幣経済における問題と同様の問題を内包している。「だれも贈与したくないような人」「誰からも評価されない人」は淘汰されてもいいのか、よくないのならばそういう人を救う仕組みをどうつくるのか。貨幣経済において周辺化されている人間が贈与、評価経済においては周辺化されない、もしくはされにくいという保証はない。

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