街場のマンガ論 (小学館文庫) の感想
参照データ
タイトル | 街場のマンガ論 (小学館文庫) |
発売日 | 2014-02-06 |
製作者 | 内田 樹 |
販売元 | 小学館 |
JANコード | 9784094060218 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
ブログエントリーなど様々な媒体に書いたマンガ論をまとめた著者恒例のアンソロジー本。他の街場シリーズに共通するように、相変わらずのお気楽印象論(ほめてます)が展開されていく。しかしその印象論が幾度となく膝を打ち、あまりに面白い結論にいきつき、なおかつ文章も上手いからすいすい読まされてしまう。
マンガ批評というのは難しいもので、その多くがよくよく読んでみると「それってこれ(あるマンガ作品)がマンガでなくたって言えることなんじゃね?」という、なんともいえない腑に堕ちなさがある。つまり、その作品が絵と吹き出しとコマ割りからなる「マンガというメディア」描かれる必然性を証明することに成功しているような批評というのは、なかなかないのだ。
この本もその問題に該当し「マンガの批評」というより、井上雄彦作品をとおしての武道論や、少女マンガをとおしての言語論など、「マンガをとおしての分析」のニュアンスの方が強い。直接的にマンガであること、マンガだからこそと言える論考というのは、大塚英志の論を引いて論ぜられている少女マンガの発話水準の問題くらいだろう(それだけに、少女マンガというのはマンガの異端のようでいて、実はマンガがマンガであるべき存在根拠をあたる、「もっともマンガらしいマンガ」なのかもしれない)。他の論考で描かれる問題は(重要であることは大前提ではあるものの)、マンガ出なければならない必然性は希薄だ。
ただ、内田フォロワーの筆者としては、珍しくオタクや腐女子について言及している点や、珍しく大塚英志の論を引いている貴重な論考もあり、よかった。また、私も「これはブログで読んだな」と思う論考もいくつか入っているが、それでも目で追ってしまう。それくらい、この人の文体が心地よいのである。
マンガ批評というのは難しいもので、その多くがよくよく読んでみると「それってこれ(あるマンガ作品)がマンガでなくたって言えることなんじゃね?」という、なんともいえない腑に堕ちなさがある。つまり、その作品が絵と吹き出しとコマ割りからなる「マンガというメディア」描かれる必然性を証明することに成功しているような批評というのは、なかなかないのだ。
この本もその問題に該当し「マンガの批評」というより、井上雄彦作品をとおしての武道論や、少女マンガをとおしての言語論など、「マンガをとおしての分析」のニュアンスの方が強い。直接的にマンガであること、マンガだからこそと言える論考というのは、大塚英志の論を引いて論ぜられている少女マンガの発話水準の問題くらいだろう(それだけに、少女マンガというのはマンガの異端のようでいて、実はマンガがマンガであるべき存在根拠をあたる、「もっともマンガらしいマンガ」なのかもしれない)。他の論考で描かれる問題は(重要であることは大前提ではあるものの)、マンガ出なければならない必然性は希薄だ。
ただ、内田フォロワーの筆者としては、珍しくオタクや腐女子について言及している点や、珍しく大塚英志の論を引いている貴重な論考もあり、よかった。また、私も「これはブログで読んだな」と思う論考もいくつか入っているが、それでも目で追ってしまう。それくらい、この人の文体が心地よいのである。
内田氏の『街場の〜』シリーズの一巻であるが、これはいただけない。
本書の第五章「宮崎駿論」はマンガ『風の谷のナウシカ』を論じるのかと思いきや、
ただ単にフィルムへのざっくばらんな感想にすぎないし、
第六章「マンガ断層」はもはや単なる身辺雑記でしかない。
他の章でも純粋な漫画論とは言えない箇所があまりに目立つ。
最終章の第七章「戦後漫画論」と題する養老孟司との対談によって
ヴォリュームを増やしたのは明らかで、
要するに単行本として世に出す書物ではない。
また、これは最近の内田氏の著作の多くに言えることだが、
旧著との内容の重複が目立ってきた。
内田氏のファンにとって、この書物が面白い読み物とは到底言えないだろう。
本書の第五章「宮崎駿論」はマンガ『風の谷のナウシカ』を論じるのかと思いきや、
ただ単にフィルムへのざっくばらんな感想にすぎないし、
第六章「マンガ断層」はもはや単なる身辺雑記でしかない。
他の章でも純粋な漫画論とは言えない箇所があまりに目立つ。
最終章の第七章「戦後漫画論」と題する養老孟司との対談によって
ヴォリュームを増やしたのは明らかで、
要するに単行本として世に出す書物ではない。
また、これは最近の内田氏の著作の多くに言えることだが、
旧著との内容の重複が目立ってきた。
内田氏のファンにとって、この書物が面白い読み物とは到底言えないだろう。