江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書) の感想
参照データ
タイトル | 江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 原田 実 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784061385559 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 趣味・実用 » 常識・マナー |
購入者の感想
本書の価値は2つあると思います。
1つは「江戸しぐさ」なる捏造された歴史に対する批判です。
これは江戸時代の浮世絵や書物などの史料を元にしているため、信憑性は高いと思います。
もちろん「江戸しぐさ」自体、その提唱者達は「政府の弾圧などで証拠が残っていない」と言い張ってるので、史料ベースでの検証は意味がない(と主張される)かもしれませんが。
もう1つ、そういった「偽科学」(歴史の偽造を「科学」に含めるかは異説があるかもしれませんが)に対するスタンスとして、目から鱗が落ちました。
というのは、前述のように「江戸しぐさ」がいかに現実の歴史とかけ離れているかを提示するだけでなく、その提唱者のどのような経験や思想からそういった「嘘」が作られていったか、という点まで踏み込み、完全な検証こそ困難なものの説得力のある仮説として提示している点です。
嘘を嘘だからと切り捨てるのではなく、そういう嘘が提唱されるに至った経緯を解明することで、「江戸しぐさという虚偽が発生したこと」という一連の事象そのものを研究対象とする、というスタンスは読んでいて非常に興味深いものでした。
「道徳を教える根拠に嘘を用いたら、それが嘘だと判明したときに道徳そのものが崩壊する」というのは非常にまっとうな指摘で、願わくばそういった事態に世の中が向かわないことを祈るばかりです。
(そのために嘘を塗り固めていけばいい、ということは絶対ないはずです)
1つは「江戸しぐさ」なる捏造された歴史に対する批判です。
これは江戸時代の浮世絵や書物などの史料を元にしているため、信憑性は高いと思います。
もちろん「江戸しぐさ」自体、その提唱者達は「政府の弾圧などで証拠が残っていない」と言い張ってるので、史料ベースでの検証は意味がない(と主張される)かもしれませんが。
もう1つ、そういった「偽科学」(歴史の偽造を「科学」に含めるかは異説があるかもしれませんが)に対するスタンスとして、目から鱗が落ちました。
というのは、前述のように「江戸しぐさ」がいかに現実の歴史とかけ離れているかを提示するだけでなく、その提唱者のどのような経験や思想からそういった「嘘」が作られていったか、という点まで踏み込み、完全な検証こそ困難なものの説得力のある仮説として提示している点です。
嘘を嘘だからと切り捨てるのではなく、そういう嘘が提唱されるに至った経緯を解明することで、「江戸しぐさという虚偽が発生したこと」という一連の事象そのものを研究対象とする、というスタンスは読んでいて非常に興味深いものでした。
「道徳を教える根拠に嘘を用いたら、それが嘘だと判明したときに道徳そのものが崩壊する」というのは非常にまっとうな指摘で、願わくばそういった事態に世の中が向かわないことを祈るばかりです。
(そのために嘘を塗り固めていけばいい、ということは絶対ないはずです)
「水からの伝言」と並び、今や初等教育に入り込んだ疑似科学なら疑似文化、偽史として悪名高きかの「江戸しぐさ」は一体どこからやって来たのか、そして現在どのように受容されているのか、受容されているとしたら何が問題であるのか。本書ではそういったことが順序立てて解説してあります。
「江戸しぐさ」なるものの何がおかしいのか、何が問題なのか、というだけでなく「仮に江戸しぐさが後世の創作であったとしても、それを通じて礼儀作法や思いやりの心を教えるのならば意義があるのではないか」という、一見もっともらしい意見についてもそれのどこが問題であるのかの反駁が論理的に加えられています。
基本的には「「江戸しぐさ」ってヤバいよ!」という趣旨が一貫しており、読者もまたそのような立場から読まれることが多いでしょうが、しかし教育倫理などを離れたところから見ると、いち個人が「江戸しぐさ」なる偽史の体系を想像で作り上げ、思うがままに妄想した「幻想の江戸」のイメージををここまで普及させてしまう過程というのは、それだけでも読み物として面白くあります。
「江戸しぐさ」なる現象を通じ、世間に無数にはびこる「江戸しぐさ的なものごと」を理解する上でも意義ある一冊です。
「江戸しぐさ」なるものの何がおかしいのか、何が問題なのか、というだけでなく「仮に江戸しぐさが後世の創作であったとしても、それを通じて礼儀作法や思いやりの心を教えるのならば意義があるのではないか」という、一見もっともらしい意見についてもそれのどこが問題であるのかの反駁が論理的に加えられています。
基本的には「「江戸しぐさ」ってヤバいよ!」という趣旨が一貫しており、読者もまたそのような立場から読まれることが多いでしょうが、しかし教育倫理などを離れたところから見ると、いち個人が「江戸しぐさ」なる偽史の体系を想像で作り上げ、思うがままに妄想した「幻想の江戸」のイメージををここまで普及させてしまう過程というのは、それだけでも読み物として面白くあります。
「江戸しぐさ」なる現象を通じ、世間に無数にはびこる「江戸しぐさ的なものごと」を理解する上でも意義ある一冊です。