ユーロ――危機の中の統一通貨 (岩波新書) の感想

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タイトルユーロ――危機の中の統一通貨 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者田中 素香
販売元岩波書店
JANコード9784004312826
カテゴリ » ジャンル別 » 投資・金融・会社経営 » 一般・投資読み物

購入者の感想

現在の世界金融危機で「寄らば大樹の陰」のように、欧州の非加盟国がユーロに助けを求める。リーマン・ショック以降、対ドルでポーランドやハンガリー、バルト三国は数十%大暴落した。GDPも強烈に落ち込む。どう逆立ちしても自前のハードカレンシーが持てず通貨競争の荒波にもまれるなら、通貨発行の自由はなくてもユーロの傘に入ってしまおうという考えは理解できる。ギリシアもアイルランドも自国通貨だったら、デフォルトするまでどこも全面支援してくれなかったろうが、ユーロ加盟国だからこそ、ユーロの信認を守るべく独仏が全力で支えてくれるし、財政規律にうるさい欧州中銀もこれらの国債買い入れに踏み切った。「ユーロ解体」どころか結束は増しているのだ。

南欧などの財政脆弱国PIIGSから生じた「ユーロ同盟は解体するのではないか」という「ユーロ危機」について、著者は「解体はあり得ない」と即答する。多くの加盟国において、現在の状況でユーロに加盟していることはプラスに働いているからだ。「財政を粉飾して散々遊んできたギリシアの尻ぬぐいをなぜドイツがしなきゃならんのだ」というドイツ人の怒りは当然だが、その反面、ドイツマルクだったら日本のようにマルク高で青息吐息になるはずがユーロ安で経済が順調…とユーロの恩恵を享受しているし、ギリシアも仮にユーロを脱退すればドラクマが暴落してユーロ建て国債がデフォルトする、と著者は推測する。

ユーロ発足直後に上梓されたものの改訂版だが、半分がリーマン・ショック以降のユーロ危機の解説に当てられているほか、ユーロのシステムについて解説された第3章、発足までの経緯が書かれた1、2章も旧版出版以降のデータや情報が補完されていて、事実上の新作だと思う。ユーロ危機以降の金融政策をアップトゥデートに論じるだけでなく、「ユーロ」という通貨の他通貨との違い、欧州における重要性の高さを再認識させる、価値ある本だ。

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岩波書店から発売された田中 素香のユーロ――危機の中の統一通貨 (岩波新書)(JAN:9784004312826)の感想と評価
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