古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)
発売日2014-11-14
販売元河出書房新社
JANコード9784309728711
カテゴリ古典 » 日本の古典 » 古代・中世文学 » 古典文学研究

購入者の感想

「古事記」は何度も読み始め、挫折の連続
今回は実に面白くページを繰ることができた
その要因は、分かり易さが半端ではない、なぜか人名・地名などが頭に入りやすい
カタカナの連続が、これまでの挫折の主原因、これが今回は解消
この度のこの全集は古典の新訳のみ購入、若い文学好きに大いに読んでほしい

この春から池澤夏樹個人編集日本文学全集を順次読んで行こうと思う。改めて「教養」を身につけたいと思ったからである。

第一回の配本は、愉しみにしていた池澤夏樹訳の古事記。お父さん(福永武彦)の訳は一個の独立した新しい小説のようだった。池澤訳は、それとはまた雰囲気が違う。1番の特徴は「注」があることだ。しかも楽しい。学者のそれではなく(もちろん、学術的な厳密さも担保してあるはず)、朗読の聴き手、読み手としてのそれなのだ。例えばこう。

(黄泉の国のイザナミの言葉)「私を見ないでください」の解説にこう書く
「と言われて見てしまうのは物語のお約束である。禁忌と違反。」

または「ネズミ」について
「語源は「根に棲むもの」。地下の動物とみなされていたから。だから後には「おむすびころりん」のような話が生まれた。」

なぜ「注」を入れたのか。池澤夏樹によれば、物語の面白さを優先させれば学術的な説明が削ぎ落とされてしまう、しかし古事記の面白さは朗読した時のリズムが重要(長い長い名前の羅列もそう思えば重要に思える)、よって小説家の訳なのに「注」が入ったというわけだ。

例えば1番最初につぎつぎと生まれる神々の名前は、かなり「言葉あそび」があるらしい。また、抽象的な意味も持たせている。それを説明せずに朗読して聞かせることが意味があったのだろう。

ともかく池澤訳で一気に読ませる国定公文書の「歴史」は、豊穣な想像力と世界的な知識と有名な歌歌の表現力に満ちている。

また、池澤夏樹に指摘されて初めて気がついたことの一つに、その後の日本人の思想に決定的な影響を与えた、「敗者に寄り添う思想」が色濃く見えるのは、驚きだった。

良書。今後は「読むための古事記」としては、本書こそ座右の書になるだろう。

古事記のあつかいで最も厄介なのは神名の列記だが、それを省略せず、
しかも鬱陶しくない。改行と、漢字・仮名を使い分けて、視覚的に分かりやすい
(その点に配慮したことを、冒頭で池澤さん自身が明快に説明している)。

作家による現代語訳は、古典を味あわせたいサービス精神からなのか、往々にして、
現代人向けに希釈し過ぎたり、蒸留し過ぎたりしてしまって、興ざめする。
だが本書はちがう。抑制をきかせた味わいながら、仕込みも仕上がりも平板でない。

例えば、有名な「国生み」の話。イザナキのイザナミへの語りかけは、こうなる。
「俺の身体もむくむくと生まれて、生まれ過ぎて余ったところが一箇所ある。
きみの足りないところに俺の余ったところを差し込んで、国を生むというのはどうだろう」

原文(本書に併載はありません)の「我が身は成りなりて成り余れるところ……」という
強調表現を、「むくむくと」という擬態語に移しかえたのは、いかにも池澤さんらしい。
他所でも、こうした作家らしいセンスと英断がほとばしる。
ちなみに、イザナミの答えは「それはよい考えね」。

さらに本書の長所は、「現代語訳」でありながら簡潔な脚注がついている点。
「むくむくと生まれた」という解釈について、脚注は以下のように説明する。
「原文の動詞は『成る』である。ともかく古代には自然の力が溢れて、
すべてのモノがむくむくと生まれた。古代人には豊饒への信頼があった」(p.29)

自分が古事記の逸話で個人的に惹かれるのは、允恭天皇の子女、カルノミコと
カルノオオイラツメ(軽皇子、軽皇女)の悲劇と、これにつづく、
安康天皇を弑逆し、己も滅びるマヨワノミコ(目弱王)の悲劇だ。

池澤さんの訳では、彼らのすさまじい物語が淡々と綴られ、
しかしそれゆえに、惻々と、しみわたる(pp.306-320)。
そして、ここでも効果を発揮するのが、過剰すぎない脚注だ。

 「天皇の、天皇による、天皇のための」物語と言われる「古事記」だが、同時に訳者の池澤氏が言うように「日本で最初に完成した文学作品」である。その現代語訳。なかなかに面白い。面白くてエロチック・・・でもある。

 イザナキとイザナミが性交の体位を変えることによって・・・さらに、男神たるイザナキが先によがり声を出すことによって、はっきりとした日本列島の形が生まれた・・・・・・逆だと蛭のような淡々とした形しか出てこなかった・・・・・なんだそうだ。

 美人がうんこしているシーンが出てきたり、ホトを突っつかれるシーンが出てきたり、ヤマト・タケルがイヅモ・タケルに「ちゃんばらごっこしない?」って誘うシーンも出てきたり、「ああ、こりゃ、こりゃ」って、囃子言葉をわめくシーンが出てきたり・・・・・エロティックで、俗っぽくて、おかしい。
 サッカー日本代表の守護神・八咫烏の話もある・・・・・。

 しかし、結局は延々とした天皇の系譜の書き連ねが飽きもなく続く物語であることには違いない。その部分を事細かに全文翻訳したことに訳者の苦労がしのばれる。で、その中に、エピソード的に語られるのが、我々が昔ばなし・神話とかで知っている因幡の白うさぎとか、ヤマトタケルの武勇伝とか、オオクニヌシノミコトの話なのだ。

 近鉄奈良駅を西の方に少し歩くと、高天(たかま)という地名のある交差点があるが、ここいら周辺で古代の神々が跋扈していたのだ・・・・・・関西を中心に日本各地の現在にまで残る多くの地名が、既にこの時代に起源をもつものが多くあるということを知ることも、なかなかに興味深い。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)

アマゾンで購入する
河出書房新社から発売された古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)(JAN:9784309728711)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.