ROME[ローマ]ブルーレイ コンプリート・ボックス(10枚組) [Blu-ray] の感想

ローマの共和政から帝政への過渡期を描いた作品
あくまで、歴史に基づくフィクションとわりきってみても、よくできている。
理由は以下の３点である。
１．架空の人物を主人公にし、その視点から史実の英雄たちを描いている。
　　そのためどの英雄たちも、過剰に美化されることなく、短所も併せ持つ人物として人間的に描かれている。
　　例）有能だが尊大にふるまってしまうカエサル、粗野で人間臭いアントニウス、教養があるが優柔不断なキケロなど
２．日本語吹替えもおすすめ。固有名詞が教科書通り。
　　HBOとBBCの共同制作なので、当然英語が使われている。なので劇中ではCaesar（カエサル）が英語読みのシーザーとなっている。
　　おすすめなのは日本語吹替えである。固有名詞が世界史の教科書通りなので、違和感が少なく、その世界に入りやすい。
　　例）Caesar（カエサル）、Jupiter（ユピテル）、護民官、執政官、独裁官など、
３．当時の人々の生活も生き生きと再現
　　泥臭い下町の様子、かたや屋敷内の豪華な生活、貧富の格差による当時の社会不安が視覚的に伝わってきて、物語に説得力を与えている。
　　当時を再現するこだわりからか、エログロの場面も多いが、それさえも、当時はそういう世界だったのではないかと考えさせられる。

海外ドラマって、人気が出たら続きの話を作って〜を繰り返しやがて駄作に堕ちて打ち切り、なんてのはありがちですが、
この作品は企画の最初から２２話で完結するよう構成されています。
なのでプロットに無駄がなく、最初から最後まで失速することなく話が展開していきます。

まず、すばらしいのは人物です。
この物語に出てくるプッロは、普段は温厚なのに一度スイッチが入ると猛獣のようになります。
そのオンオフの激しさに爽快感を覚えること間違いないでしょう。
そしてヴォレヌス。百人隊長としてローマで名を馳せた猛者で、見た目も彫刻像のようで強そうです。
戦いしか知らない不器用な男が、家族の傍にいることを選び別の道を模索していく姿には、込み上げるものがあります。
ある事件がきっかけでプッロに慕われるようになりますが、ゆるぎない男と男の友情に胸が熱くなります。

世界観の描写も素晴らしいです。
現代とは倫理観がまるで違います。正義の行なわれ方も全然違います。
現世であれば殴り合いの喧嘩で済む場面がもういきなり命の取り合いです。
そして殺してしまったらドブに捨てます（笑。
そういう、自分の命は自分で守らないといけない粗暴な世界で、人物たちが必死に生きています。

皇帝暗殺〜新皇帝誕生というローマの史実を土台にした物語の中で、テーマは家族愛だったりします。
ヴォレヌスの家族・友人が散っていき、長い年月を経て取り戻すのにはぐっときます。

とにかく、面白い、感動した、それ以上に血がたぎり興奮するドラマです。
エログロ場面がそれなりにありますが、家族で一緒に見るのでなければ大丈夫だと思います。
海外ドラマが好きな人でこの作品を見たこと無い人はぜひ見るべきです。
誰にでもおすすめできるくらい完成度の高い作品です。