理不尽な進化 :遺伝子と運のあいだ の感想

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タイトル理不尽な進化 :遺伝子と運のあいだ
発売日販売日未定
製作者吉川 浩満
販売元朝日出版社
JANコード9784255008035
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 自然哲学・宇宙論・時間論

購入者の感想

実は、読破した今でも、本書から受けた衝撃をコトバに出来ずにいる。
進化論が好きで本書を手に取るのもいいが、進化論などノーマークだった人にこそ、薦めたいと思う。難解な箇所もあるけど、エッセンスを逃さないよう読めば(それに、著者は、読者が迷わないよう丁寧に補助線を引いてくれています)、意外な「鉱脈」を掘り当てられるだろう。自分にとっては、「この時代をどう生きていくべきか」という哲学的問いにたいする、ひとつのアイデアをもらった。
人間という、存在からして不可解な生き物が、自分たちの制御を超えてしまった、現代社会というこれまた不可解な現代社会で、どう生きていくのか。ひとつだけ言えることは、極めて脆弱なバランスの中で、自分は生きているという実感であった。
本書は、閉塞した現代社会にあって、その壁を溶解させる「酸のようなもの」を示してくれているような気がする。もちろんそれは効き目100%のビタミン剤などではない。ヒトを見つめ直すという、古くて新しいテーマである。かつて詩人の荒川洋治は、経済・法学・工学など、従来「実学」と言われていたものがあやしくなってくる一方で、文学・哲学など、役に立たないといわれ「虚学」に甘んじてきた人文科学が「実学」として輝き出す必要性を説いた。それに応えるかのような(著者にそうした意図はないだろうが)、トリックスター的傑作である。

進化論について論じたものではありません。
むしろ、進化論についての一般の誤解と専門家の対立を材料に、進化論を材料に、長く闘われてきた哲学的
論争へコメントしたものです。
本書は、法則定立的な一般化を指向する科学的方法と、個別具体的な一回帰性の出来事を理解しようと
する解釈学的伝統の対立をこそテーマとしています。

しかし、いろんな点で、とてもお薦めです。
上述のように、本書のメインは、「説明/理解」ないし「方法/真理」、科学的方法論と体験的了解をめぐる
一連の実証主義論争にこそあります。で、まず、その整理が秀逸であり、その論争への本書のコメントは一聴の
価値ありです。個人的にはドイツ歴史学派への言及にあってウェーバーへのコメントがない点が不満でしたが、
それでも本書の実証主義論争の整理には唸りました。
また、進化論はあくまでもメインにとっての利用しやすい導入という形ですが、それでもグールドとドーキンスの論争
についての本書の整理と裁定は、過去瞥見の限りで、もっともわかりやすく、もっとも理解しやすいものです。

さらに。
適応主義的アプローチをめぐっての論争では、一片の誤解や弁護の余地なく「負け」と裁定されたグールドの、
その動機にさかのぼって、上述の長らく哲学畑ではお馴染みの論争という枠組みの中で、敗退者であるはずの
グールドを救いあげる(というか、グールドが触れていた問題を、グールドに成り代わって再論する)手並みは、
見事でもあり、まさしく論争の一方の側としての一回帰性の出来事の了解的体験という立場的にも【感動的】
でもあります。

進化論についての解説書でもなく、メインテーマの哲学的議論についても専門性は薄く、一般的な啓蒙書という
わけでもなく、批評としてもやや散漫かもしれません。
しかし、通俗進化論において話題になった論争の非常にわかりやすい解説が読めるというお得な副次効果を持ち、
むしろ、了解的体験のためのコミットメントをまさしく実践している好著だと思います。

我々に興味があるのは競争と生き残り(確かにその通り)
それに対して、この本が着目するのは運と絶滅。
生物種の99.9%が絶滅、しかも大部分が運が悪くて絶滅するんだと。
それなら、そうした観点から生物進化を見てやろうじゃないのと。
おもしろいじゃないか! 事前知識がなくてもグイグイ読ませる。
だんだん哲学的な話になっていくが、どうだろう、前半だけでも読む価値アリ。

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