西行論 (講談社文芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル西行論 (講談社文芸文庫)
発売日販売日未定
製作者吉本 隆明
販売元講談社
JANコード9784061960695
カテゴリ文学・評論 » 詩歌 » 詩集 » 現代詩

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[ASIN:4061960695 西行論 (講談社文芸文庫)] 西行は古来最も敬愛されてきた歌人の一人、繊細な心と大胆な行動で知られ、さまざまの伝説を生みました。幽艶にして雄渾な歌いぶりと謎めいた人物像が、今も多くの人々を惹きつけています。
 伝記資料が乏しい西行の人間像を描き出すために、吉本氏の設定している視点は二つ。
 一つは、現存する歌を重要な資料として、その綿密周到な解釈を通じて和歌の伝統に西行を位置づけるとともに、その人間像に迫ること。もう一つは数多い伝説の中から、西行の歌との関係で最も信憑性の高いものを特定し、当時の歴史的諸条件と関連づけながら、武門を捨てて出家した僧形の歌詠み西行の屈折した内面を浮き彫りにすること。氏の論の進め方が「僧形論」「武門論」「歌人論」という三部立てになっているゆえんです。
 ここで問われる主な問題は以下の通りですが、なかでも重要なのは問題の4です。これを明らかにする準備作業として問題1-3が設定されていると言えます。
1.西行が富裕な武門に生まれた北面の武士でありながら、出家したのはなぜか。
2.武家の世俗の歌詠みであった者が、出家後も歌を詠みつづけたのはなぜか。
3.出家は浄土思想の「前衛的」実践であったが、他の出家者と異なるどういう生き方が西行に
 認められるか。
4.出家後の彼における真言浄土に対する〈信〉と〈歌〉との関係をどのように捉えるべきか。
 また僧形である彼の〈歌〉は、同時代の他の歌人に対してどういう独自性を示しているか。

 平清盛と同年生まれの西行が生きた時代は、武士団の勢力が台頭し中央政権に介入し始めた時期に重なっており、朝廷の政治権力をめぐる貴族たちの抗争が、武士団を巻きこみ、やがて血なまぐさい合戦になることは避けられず、それが彼に出家を決意させたかなり有力な理由であろうと考えられます。当時、在俗者の出家遁世はけっしてめずらしいことではなく、その多くは草庵に独居して来世の浄福を願い、自然死に近い形で生を全うしましたが、西行の出家はその理念の典型とみなされました(歌人にして前代未聞のたくさんの伝説がまとわりついたゆえんです)。

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