ヘンな日本美術史 の感想

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参照データ

タイトルヘンな日本美術史
発売日販売日未定
製作者山口 晃
販売元祥伝社
JANコード9784396614379
カテゴリアート・建築・デザイン » 芸術一般 » 美術史 » 東洋・日本美術史

購入者の感想

全体的に自由な風の吹き抜ける、風通しの良い本書。
第四章のテーマは「日本のヘンな絵ーデッサンなんかクソくらえ」。

この章で筆者は、技術的に大したことないというより破綻している絵を取り上げながら、
下手な絵が享受されていた時代背景に共感の意を表す。

西欧における絵画の歴史的変遷を脇で進めながら、
日本美術史のおかしさを的確にツッコむこの章は、単純に面白いと同時にスリリングだ。

絵師としての実体験をベースに机上の理論的になりすぎないように書かれた本書は、
日本画に対する読者の興味を存分に掻き立ててくれる。

オススメです。

 この手の本は小難しく書かれていることが多く評者は覚悟して読みはじめた。
 が、日本画の知識に乏しい評者もページを繰るのが速くなってきてしまった。
 第一章「日本の古い絵」”鳥獣戯画”から始まり、第五章「やがて悲しき明治画壇」まで著者ならでのユニークな視点でユーモアも交えながら日本画の概略を楽しく読ませてくれた。
 第二章の「こけつまろびつの画聖誕生ー雪舟の誕生」を読みながら、かって評者が下呂市の「禪昌寺」で初めて「雪舟筆大達磨像」を拝観した折のことを思いだしてしまった。
 薄暗い部屋で現存している雪舟の傑作の一つ「八方にらみの達磨」を観たとき、その大胆な構図に驚き、右により、左により、前から眺めてもカッと右上(絵の中の達磨の目線は左上だが)目線なのにどこから見ても睨まれているようで恐ろしくなってしまった記憶である。
 数年後、禪昌寺を訪ね二度目に雪舟の達磨に対峙した時には、炯炯と睨む眼光と禿げあがった白く大きな頭と、大胆なまでに太い筆使いであっけないほど省略して描かれてる衣との対比に違和感を覚えたのだが、よくよく観ているとひょっとしたらこれ抽象画と言ってもいいのじゃないか、と思いながら観てしまったのです。
 著者が本書第二章で雪舟の絵を詳しく解説してくれていたのを読んでいて、評者が二度目に禪昌寺を訪れて雪舟と対峙したとき感じたことの意味を知ることができた。 
 本書は、日本の代表的ともいえる絵師を著者の好みでピックアップし、日本画が辿ってきた歴史を俯瞰しながら、そのエッセンスを著者ならではの個性的な文章で面白く読ませてくれたので、「ヘン」な美術史などではない良書でると高く評価したい。
 
 

本書の題名からして面白い。”美術“なる概念は明治に輸入されたものである。もっとも、ほとんどの学問分野もその時に輸入されたのだが。成程と思ったのは・・・”『美術』と云う明治に訳された言葉でそれ以前の雪舟や北斎をくくると云うのは、足利や徳川の将軍を足利総理大臣、徳川総理大臣と呼び直すような無理がある“との記述を読んだときである。我々が美術教育で思い込まされてきたことを、画家である著者はまさに自然体に近い記述で我らの”思い込みを“解いて、絵自体を楽しめるように導いてくれるのです!
3次元から2次元への写像(おおげさだ)・・・立体を平面上に表現する“絵”なる術の工夫、カラクリと絵を描く術はどのように対応しているかを丁寧に説明してくれる。
イタリア・ルネサンスでは学問・科学の発達する時代にあって、遠近法、油彩画など革命的とも言える技法が確立されていた・・・このようなことは知っていても、日本の“絵”に関する全体像にはほとんど知識を持ち合わせていない。だからこそ本書の著者の記述がスーット素直に理解できた。西洋、中国、現代人から見ると日本の美術は“変わっている”のである。鳥獣戯画、伝源頼朝像、雪舟の“破墨山水画”他、円山応挙、伊藤若冲等。何故こんな風に描いたのか、どうすればこんな風に描けたのか・・・この“ふしぎな”日本美術を、だれでも知っている絵を、新しい絵として見つめ直させてくれる。
日本人でなくても、これは是非お読みください。お薦め!

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祥伝社から発売された山口 晃のヘンな日本美術史(JAN:9784396614379)の感想と評価
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