翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり
発売日販売日未定
製作者片岡 義男
販売元左右社
JANコード9784865281002
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 一度でも或る程度の長さの(少なくとも100ページを超える)小説の翻訳に手を染めたことのある人ならお解りのことと思うが、翻訳には様々な難関が待ち構えている。語釈の問題、文の構造の問題、代名詞が何を指すかの問題、日本語には存在しないものをどう訳すか(或いはカタカナで済ますか)の問題、等々。しかし中でも一番の難関は、その小説の持っている雰囲気を、どう読者に伝えるかだろう。
 片岡氏と鴻巣氏は、例題として取り上げられた7つ英文の、語釈・文構造・代名詞については、ほとんど意見の相違はないようである。また日本語にはないものの訳し方については、片岡氏がカタカナで良い、判らないなら判らないで放っておけば良い、大勢には影響ないのだからと素っ気ないのに対し、鴻巣氏は読者に少しは解ってもらおうと努力しているものの、翻訳感の大きな違いには至っていない。
 で、一番の問題、その小説の持つ雰囲気をいかに読者に伝えるかだが、これに関してはお二人の間にかなり大きな見解の相違がある。鴻巣氏は、翻訳の先達であり作家でもある片岡氏にそうとう遠慮されている様子で、他の作品に関してははっきりと述べていないが、自らが全篇を訳した『嵐が丘』の話になると、自信にも裏打ちされているのだろう、自説をかなりのところまで――と云ってもあくまで失礼にならないよう注意を払いながらですが――明確に述べる。例えば pp.146-47、
 片岡氏が、<「昔」を感じさせる言葉や昔ふうの書き方はいっさいしない、むしろその反対に、極めてわかりやすい現代語で書く、それが僕のとった方針です。>と云うのに対し、鴻巣氏は、<やはり古めかしい文章にしたほうがいいと考えました。……(中略)……原文も、少し古めかしい文体が用いられています。>と反撃する。
 片岡氏は頑なに自分の文体に――もし片岡氏に所謂文体らしい文体があるとすればの話ですが、私には、現代日本の多くの作家に「文体」を感じることができないように、片岡氏の翻訳文にも「文体」を感じることができないのです――こだわる。だから、どの翻訳を読んでも同じような文体に感じられる。(それが片岡義男なのだからと、それを期待している読者も多いのかもしれませんが。)

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり

アマゾンで購入する
左右社から発売された片岡 義男の翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり(JAN:9784865281002)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.