侍はこわい 時代小説 短編集 (光文社文庫) の感想

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タイトル侍はこわい 時代小説 短編集 (光文社文庫)
発売日販売日未定
製作者司馬 遼太郎
販売元光文社
JANコード9784334738099
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

「権平五千石」…平野権平長泰。
賤ヶ岳の七本槍の一人でありながら、終生不遇であり続けた男の生涯。秀吉の近習から身を起こし、存分な槍働きで武名を為すも、その地味さ故に顧みられず、遂に生涯五千石で終った。彼の可笑しみは、大坂の陣の際、わざわざ家康に拝謁して、自分を非凡に見せようと大坂方への与力を宣言しに行く所だが、子供の様にあしらわれてそれも叶わない。されど加藤清正、福島正則、加藤嘉明らの大身の豊臣大名が次々に家を取り潰される中、遂に幕末まで五千石の儘家を保った。不思議な家運と言うべきか。

「豪傑と小壺」…稲津忠兵衛。
実在する茶器の大名物、「稲津肩衝」の由来に纏わる一人の不運な侍の話である。細川家の名臣、「鬼佐渡」こと松井佐渡守康之に仕える忠兵衛は無双の大力を持ちながら戦場の運を得ず、名を為さない儘終わるが、所持していた無銘の小壺が千金の値を持つ名器であった。当の忠兵衛は松井佐渡守に殉死して不遇な生涯を終える。此の茶器は「松井肩衝」とも呼ばれ、忠兵衛が七十文で購入した事と、「人生七十古来稀也」とを重ねて、細川三齋が人生(ひとよ)と命銘、後出雲の松平不眛公の手に渡り、今尚家宝とされて伝世している。

「狐斬り」…因州鳥取藩士深尾角馬。
剣客の妙を伝える小編。その切腹の情景は見事と言う他無い。深尾角馬(1631[寛永8]-1682[天和2])、名は重義、号は井蛙。雖井蛙(せいあ)流平法の剣術を創始(現在鳥取市無形文化財)、他に安心流、化顕流の居合も創始。

「忍者四貫目の死」…伊賀忍者蚊羅刹。
虚々実々の忍者の玄妙な世界。誰もがお互いの本当の素性を知らず、技到らざれば即命を落とす。蚊羅刹は『忍秘記』に名の見える実在したらしい伊賀忍者。知道軒(四貫目)は殆ど伝説に近い様な存在の達人。そして若き日の服部半蔵が登場する。

「みょうが斎の武術」…十津川郷士久富源五郎。
慶應三年、鳥羽伏見の戦いの後、大坂に進駐してきた薩摩藩士と大坂剣客との間で行われた「天満仕合」の顛末と、犬猫の動きに身を落とす奇妙な流儀の剣客を描く。人物は創作だが、幕末という時代にありながら、銭を稼ぐ事に称揚すべきせせこましさを見せる大坂人の生活が興味深い。

司馬さんが亡くなった後に刊行された短編集がいくつかありますが、これもその一つです。
ここに収められた作品は、司馬さんの直木賞受賞前後に書かれた作品です。
短編は掲載紙間の都合で本にならない作品が多いのかもしれませんが、ここに収められたどの短編も緻密かつ面白く、何故これらの作品が2000年代に入るまで本にならなかったのか悔やまれるほどです。
読んでいると、歴史や人物に対する司馬さんの姿勢がうかがえて気持ちがいい。優しさと厳しさを含んだ炯眼が、いつもながら読者をなんとも心地よい境地に誘ってくれます。

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