アースダイバー の感想

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参照データ

タイトルアースダイバー
発売日販売日未定
製作者中沢 新一
販売元講談社
JANコード9784062128513
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品

購入者の感想

他の方も書いているように、SFです。

では、SFとしての価値はあるかというと、残念ながらそれもありません。

なぜなら、低地=湿=縄文=野性 対 高台=乾=弥生=理性 という構図は、理屈として成り立たないからです。縄文時代は人の生活圏は低地ではなくむしろ高台でした。低地に人が降りてくるのは稲作を覚えた弥生時代になってからです。つまり、筆者の空想は少し考えれば何の根拠もないことが分かります。

おそらく筆者は、昨今の縄文ブームから、近代合理主義のほころびから現れてきたものを縄文=野性的なものになぞらえ、近代合理主義=弥生=体制に「反逆」するもの、というポストモダン的な構図を作りたかったのでしょう。

「伏流」する「縄文」を(=時系列をすっ飛ばして)、「越境」する知の「視座」から(=門外漢の思いつきで)「再構築」した、と言えばポストモダン的でしょうか。

縄文時代に陸地だった地帯(洪積層)と海だった地帯(沖積層)という視点から、
現代の「東京」という場所の構造を読み解くというちょっと面白そうな
試みに惹かれて購入してみましたが、これがまたとんでもない内容なので
あえて批判させていただきます。
この本で中沢先生の論拠の元となっているのが
先生が独自に考案されたと思われる「洪積層・沖積層」理論ですが、
これを分かりやすく説明すると
洪積層=乾いた土地、高級、財産のイメージ、etc
沖積層=湿った土地、情欲、エロスのイメージ、etc
という具合になって、例えば新宿などは
高地のほうには伊勢丹などの高級デパート群があって、
低地のほうには歌舞伎町の風俗街がある、というような説明です。
では逆に渋谷・道玄坂などの
低地に高級デパート群があって、高地にラブホ街があるような場所は
いったどうなるのか? といった疑問はまったく解決されません。
要するに、江戸時代の幕府による政治上・軍事防衛上の都市建設の経緯や、
明治期以降の産業政策・住宅供給などの政策の流れなどがまったく考慮されず、
すべてを縄文時代の「洪積層・沖積層」理論で説明してしまっているために
完全に論理的に破綻していると言わざるを得ません。
東京という街が形成されていく過程、歴史的な流れが、完全に忘却されて
すべてを縄文時代に結び付けてしまう姿勢にはまったく共感できません。
この本はあくまでもファンタジーノベルの一種であって、
東京という都市の成り立ちをきちんと学びたいと思う人は
もっと別な本を読むべきでしょう。

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