競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書) の感想

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タイトル競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書)
発売日販売日未定
製作者福田 誠治
販売元朝日新聞社
JANコード9784022598974
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般

購入者の感想

2006年6月,あるマスコミは某シンポジウム記事の中で,PISAで好成績を挙げているフィンランド、英国を講演者が紹介した,と書いていた。フィンランドは確かに「学力世界一」であろうが,英国はPISA2003に参加したもののサンプル数が少なくて統計からは除外されている。また英国は,PISA2000に参加はしているが,総合読解力や数学的リテラシーなどで日本とそれほど違いがあるわけではない。

このように講演者が曖昧なことを述べているだけでなく,記者もまた不正確な情報をそのまま載せている。こうして正確な情報が伝わらないまま「低学力」という言葉だけが一人歩きしていった状況が今も続いている。そんな中で本書は,PISAの中身を明らかにすることはもちろん,行政府などへ出向き調査し,いくつものフィンランドの学校をまわって「世界一」の秘密を解き明かしている。

「地域によっては自治体の予算が余ると教育費にまわすという原則がある」「人口56万人のヘルシンキ市には図書館が38ある(船橋市には10,東大阪市には6)」などというフィンランドと,真っ先に教育費や図書予算を削る日本とでは「読解力」が違ってきて当然,と思われた。

本書を読んで、フィンランドの教育がいかに成熟したものであり、

社会との深いパイプを持っているかと気付かされ、

教育が社会を写す鏡であるとするならば、その社会全体の成熟度にも感心させられた。

そして読み進めるほどに、日本の教育について案ぜざるを得ない気持ちになった。

教育とは社会と密接に関係しているべきものであり、社会に出て本当に必要な

力をつけるための場所が学校であるはずだ。

しかし、日本の教育は社会と切り離されていて、それまでは数字での判断が主だったのに、

それでいて社会に出る際には、「個性」を要求されると言う、とてもチグハグな状況である。

本書を読んでとても印象深かったのは、フィンランドの教育が自由であり、

教師による強制なしに一人一人のやる気を引き出すというやり方の背景として、

「自分が社会に受け止めてもらえるという安心感」があるということである。

日本に置き換えて考えてみると、自分の存在を認めてもらうための努力の一つとして、

いかに数字をあげるかということに力を注ぐのではないか。

そして、そこにうまく乗れなかった子どもたちが出てくるのも仕方ない。

しかしフィンランドの教育方針は、

「教育と言う船に乗った子どもは、一人たりとも落とさせない」

というものであり、根本的な考えの違いに気付かされ、感心させられる。

フィンランドの教育から我々が学び、考えるべきことはとても多い。

教育に関わる方、またそうでない方にも一読をお勧めします。

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