明日は、いずこの空の下 の感想

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タイトル明日は、いずこの空の下
発売日販売日未定
製作者上橋 菜穂子
販売元講談社
JANコード9784062190886
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » あ行の著者

購入者の感想

著者の上橋菜穂子氏は大学で教鞭をとり、また作家業もこなすという二つの草鞋を履いている方ですが、この2つの職種はそれぞれ地続きとなって繋がっています。
著者の専門は元々先住民や異文化のフィールドワークで、そこから掬い取ったエッセンスを結晶化させて、ファンタジーという器の中に流し込む、という作業を行なっているようです。
代表作は「獣の奏者」で、評者も数年前にはまり、むさぼるように読みました。

本書は著者が17歳から現代にかけて経験した旅の数々がエッセイ形式でまとめられていました。
評者自身が旅好きなので、こうした旅のエッセイは時々手に取るのですが、本書は予想以上に面白く、「当たり」でした。
読みやすい文章に大き目の文字、イラストがそこかしこにあり、通常ならすぐに読了となるのですが、文章に味があり、つい引き込まれてしまうので一話一話をかみ締めながら読んでいたら思った以上に時間がかかってしまいました。
個人的に心に残ったのは次のようなものです。
・幼少の頃、著者がのめりこんだ古代イギリスの物語。
 これほど悩み、必死に生きた人々も、遥か昔に時の大河に溶け去ってしまった。
 その儚さに怯え、生の虚しさを贖う何かを求め、ついに小さく輝く欠片を見つけたエピソード。
・ファンタジーには、果てしない野に吹き渡る風や底のない深遠のような深い「哀しみ」があり、
 夜の底にともる懐かしい窓辺の灯火のような「願い」が輝いている。
・1人1人なら越えられる小さな隔たりは、集団になった時には越えられない大河となる。

詩的な美しさを感じさせる文章を衒いや気負いなく使っているためか、心に響きました。
また著者が少女だった頃、古典的ファンタジーに接して次のような想いを抱いたそうです。
「本当に優れた物語は、物語であることを感じさせません。
 本を閉じるとつかの間目の前の現実が揺れ、ぼうっとしてしまう。
 なぜ物語はこれほど力を持つのだろう、どうすればこんな物語を紡げるのだろう。」
同じ感想を評者も本書や「獣の奏者」に持ちました。
この著者のエッセイをもう少し読んでみたいと思います。

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