怪盗探偵山猫 虚像のウロボロス (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトル怪盗探偵山猫 虚像のウロボロス (角川文庫)
発売日2014-10-25
製作者神永 学
販売元KADOKAWA/角川書店
JANコード9784041015940
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

 本書は神永学氏による「怪盗探偵山猫」シリーズの第2弾です。最初こそややスローペースですが、物語が展開し出すと息つくひまもなく、読者をグイグイ引っ張っていく筆力はいつもながら大したものだと思いました。こうした軽めのエンタメを書かせたら、神永氏は現代の5指に入るでしょう。内容に踏み込むのはこの種の本の書評としてはルール違反ですのでやめますが、とにかく楽しめますよ。

 ところで本題からはややズレますが、山猫が自分のことを「単なる窃盗犯=こそ泥」と自己規定していることは案外重要なことなんです。こういった怪盗にして名探偵といった設定はおそらくモリース・ルブランの怪盗ルパンシリーズに始まるのではないかと思いま。、ルパンものではルパンはあるときは正義の味方、あるときは熱烈な愛国者とさまざまな顔で登場します。先年発表された未発表作品では何とルパンが社会運動家だったりまでしているのです。ところが山猫は「自分は単なる泥棒であり、悪い奴らがあくどい方法で稼いだカネを盗んだら、そいつらの悪事がたまたま露見したというだけで、自分は義賊でも正義の味方でもない。」と言い切っています。エンタメ作品を取り上げてあまり思想的な話をするのは無粋というものですが、このあたり、神永氏の社会悪とは何かという考え方がよく出ているところだと思います。神永氏はエンタメの主人公としての山猫は認め、実際創作した訳ですが、義賊などと称してて社会悪を肯定することには絶対反対であり、これは譲れない線として線引きしているのだと思います。

 ちょっと、無粋な議論でした。みなさん久しぶりの第2弾、楽しんで下さい。

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