武士マニュアル (メディアファクトリー新書) の感想

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参照データ

タイトル武士マニュアル (メディアファクトリー新書)
発売日販売日未定
製作者氏家幹人
販売元メディアファクトリー
JANコード9784840145671
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 歴史・地理・旅行記 » 歴史

購入者の感想

泰平の江戸にあっても、武士は武人たらねばならなかった。
故に奇妙なことが起こる。
鎧甲冑は質に入り、受けだしても同身につけて良いかわからない。
そのために緊急出版された、鎧の早着マニュアル。
皮肉なもんだ。
切腹さえもできな人のための切腹マニュアル。
などなど、面白い。

赤穂浪士が切腹の時、「作法を知らないので教えて下さい」と預かり先の熊本藩士に問うたが、相手も「知らんがな、すぐに死ぬんだから稽古してもしょーがないし、黙って首を打たれな」と返される。切腹にも作法がある。そして切腹マニュアルも……実はあるんです。近世武家社会の第一人者、氏家幹人氏による武士の指針、礼法を記したマニュアルから、武士の処世法のエッセンス、あるべき武士の姿とは何かを読み取る。

戦国時代マニュアル、武芸者向け、雑兵向けとあるが、いずれにせよとにかく不覚を取ってはいけないのである。刀が人の血でヌメヌメしたらもぐらの皮で拭けとか、戦場で喉が渇いたら死体の血を飲めとか…江戸期に書かれた武士マニュアルは、役人となった武士に向けサラリーマンにも通じる処世術も伝授しているが、戦国マニュアルはまさにサヴァイブのみが目的。ガチンコすぎて現代日本人には何の参考にもならない。刀は枕元に置け、いつも野山を駆け体を鍛えろ…「常在戦場」を実感するマニュアルだ。

そして、時代は平穏になり江戸。出勤は1時間遅刻はダメ、老中には会釈しろ、便所に脇差を落とさないように気をつけろ……旗本勤務マニュアルには、文官となった「武士」のありようが示されている。一方で江戸期の武士は、実質文官なのに建前上「戦士」であることを求められる。戦士としての鍛錬や精神修養はマニュアルを読まないとよくわからないようになってきた。切腹マニュアルもその一つで、武士として大事な礼法だが太平の世、そうそうあるわけじゃない。介錯を命じられたら断れ、介錯は首斬りのプロにアウトソーシングしても恥ではない、切腹人が暴れたら介添が組み伏せて打ち取れ、そのうち切腹人が暴れないように自害用の脇差は目釘を抜け…だんだん「それって自害じゃないじゃん」みたいな世界になってくる。

戦国時代は生き残るための方法だったが、江戸時代は聞かなきゃ恥な作法礼法がたくさんできた。自分が恥をかくのみならず、「末代の恥」という言葉の重み。で、自然とマニュアルが生まれる。500年前から日本人はマニュアルがないと心細いのかあと少し笑ってしまった。時代が変わり作法は変われど、マニュアルに則ってれば安心。そういう意味でカツマ先生も小島一慶も、本田健も古式ゆかしき日本の伝統文化に則ってるのかもしれない。

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