<問い>の読書術 (朝日新書) の感想

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参照データ

タイトル<問い>の読書術 (朝日新書)
発売日2014-09-12
製作者大澤真幸
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022735775
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 本・図書館 » 図書館情報学

購入者の感想

さすがは見田宗介と小室直樹門下生の書評集だ、書評であることを超えて新しい知識と問題意識を提供してくれてありがたい、と感銘しつつ、どの本も読んでみようと楽しい気分にさせてくれる本です。日本語も明晰で美しい。わかりやすくて深い。

これほど深く広く読めるとは、そして読者にわかりやすい文章で多くの本を紹介できるとは、すごいことだ、と感心します。

読書が読者の知識を広げるとともに、読者の知識と思考力の範囲で読書対象が選択され、知識が消費される(味わわれる)ことがわかります。何を読むかは大事なこと。古典はともかく、無暗に新刊を乱読すると時間が無駄になりかねないので、本書のようなガイドがあることは、とてもありがたいです。

もっとも、ガイドを盲目に受け入れることもできないので、著者は、批判的精神、「問い」続ける態度で読書しろよ、と言っているのでしょうね。

第一章は経済と政治哲学。
社会学者がこれほど経済学に詳しいのか、と感心しますが、著者が小室直樹門下と知って納得。著者がその思考の基準にしているマルクスをもっと知らなくては、と思わせます。第四章の格差社会論にもつながっています。

第二章は世界史の考え方。
第七章の網野善彦著作の書評ともども、歴史のとらえ方を提言。知識を覚えるのではなく、現在の己の問題意識から未来のために過去を研究する歴史学の醍醐味を語っています。

第三章、第四章、第六章、第七章は社会学の視点から現代社会の問題点を抉ります。
社会学が政治学や経済学で十分に拾えない問題意識に対応していることがわかり、そしてそのアプローチが現代社会に役に立つ知識を生み出してくれるという期待を抱かせます。東大の社会学科のOB/OGの著作が多いかな、という気がします。著者は常に同窓、先輩、後輩の著作をチェックし、競争しながら知識を高めているのでしょうか?

第五章は科学の本について
著者の広い知識が披露されます。最後は科学論も人間論を軸に論じられます。

結びの第七章は社会学、あるいは歴史社会学の可能性を高く評価しています。

本書は、朝日新聞ウェブ版の「ブック・アサヒ・コム」に掲載されたものを再構成したものになります。ジャンル分けするといわゆる書評やブックガイドに相当するのですが、実は、本を深く読むためのケーススタディー本という位置づけが、一番しっくりくると思います。
また、本書の特徴の一つは、本のセレクトの多様性です。学術書と言われるような硬い本から、半沢直樹シリーズのようなエンタメ小説、あるいは、テルマエロマエのようなマンガまでが扱われています。また、出版年に関しても広がりがあって、2000年以降に出版された本が多いのですが、1970年代に出版された本も2冊含まれています。ジャンルに関しては、社会科学や歴史、経済系の本が多くを占めますが、第5章では科学分野の本についても書かれています。ただ、この第5章「科学の迷宮」の内容は、他の章に比べると<問い>が浅く、本の内容をなぞっているだけのように感じたのは少し残念でした。(それでも、十分読む価値はあるのですが・・・。)しかし、やはり大澤さんの本領が発揮されるのは、社会系の本に関してです。本書からも多くの洞察を得ることができるのですが、それよりも本書で学ぶ読書術を身につけることによって、今後の読書がより実りあるものになるのではないかと思います。

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