あの頃映画 松竹DVDコレクション 戒厳令 の感想

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参照データ

タイトルあの頃映画 松竹DVDコレクション 戒厳令
発売日2013-11-27
監督吉田喜重
出演三國連太郎
販売元松竹
JANコード4988105067660
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドラマ

購入者の感想

“隻眼の魔王”と称される北一輝。 この<異様なる>人物像を描き出すことが如何に困難なことか。 期待を抱いて本作を鑑賞しましたが、名優・三國連太郎さんでさえ北一輝の表面を「さらっと撫でた程度」にしか演じきれなかったというのが、見終えた後の正直な感想です。

まず今日まで幾多の研究者により積み重ねられた史実に基づく北一輝像、この映画の“北一輝”から受ける印象は全くの別人と断ずることができるほど異なります。 2.26事件に連座し、裁判、銃殺という流れにおいて、北がどのような言動・行動を取ったのかは資料にきちんと残されています。 映画の宣伝・解説では北の思想を追求したとされていますが、北一輝について学びたいひとが最初にこの映画を観てしまうと、誤った先入観を植えつけられてしまいそうです。 (史実としての北一輝に興味がある方にはお薦めできません。)

また、北の人間的側面を描く試みについても、ひたすら姑息な部分・弱い部分のみが強調されてしまっており、なぜ彼が“魔王”と畏れられたのかがほとんど伝わってこない。 まずは辛亥革命という本物の革命闘争を潜り抜け、『日本国家改造法案大綱』によって青年将校たちを魅了した、悪魔的な(言葉本来の意味での)カリスマ性を備えた人物であったことを強く描き出し、その上で、その怪しさや、全ての人間の持つ弱さを描く方がより史実としての北一輝に肉薄するのが可能であったのではないかと考えます。

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三國連太郎さんが唯一北一輝に見えたのは「彼ら(天皇・体制側)には、(私ではなく)私の思想と闘わせる」という主旨の台詞があった場面でした。

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妻すず役の松村靖世さんが素晴らしい存在感を示していました。 力強い声に圧倒されました。 史実のすずさんは神懸かりで「霊告」を受けるなど、北一輝にとってより重要な存在=伴侶であったものと推測されます。 松村さんの力量を活かした脚本であっても良かったのではないでしょうか。 

兵士Aの妻役の倉野章子さんも素敵でした。 日本にはたくさん素晴らしい女優さんがいた/いるのだということを改めて感じます。

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