昭和陸軍全史 1 満州事変 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル昭和陸軍全史 1 満州事変 (講談社現代新書)
発売日2014-08-22
製作者川田稔
販売元講談社
JANコード登録されていません
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

川田稔教授の本はほぼすべて読んできた。本書は川田教授のこれまでの業績を取りまとめた総集編のような出来上がりである。

川田稔教授の歴史解釈をまとめると以下の通りである。

帝国陸軍および日本は出先の一機関に過ぎない関東軍に引きずられて満州事変に端を発する中国侵略戦争に巻き込まれていったのではない。日本国内に永田鉄山を頭目とする一夕会系の中堅幕僚将校グループがいて、彼らが板垣石原率いる関東軍の謀略に相呼応して国内で動いたので、日本政府は関東軍に対する有効な統制がとれなくなったのである。それだけではない。永田らの策動により宇垣一成の薫陶を受けた宇垣派は次第に身動きが取れなくなり、やがて人事を通じて宇垣派は陸軍の中枢から一掃され、一夕会系および一夕会が推す荒木・真崎ら「扱いやすそうな老人グループ」がトップとして担がれ、陸軍省・参謀本部は事実上一夕会系の中堅幕僚将校グループが実権を握るようになっていったのである。

宇垣一成をはじめとする宇垣派は開明的な将校グループだった。宇垣一成が断行した宇垣軍縮は一言でいうと「人間をリストラして、浮いた人件費で戦車を買い、機関銃を買い、軍艦を買い、戦闘機を買う」というもので、今から思うと至極まっとうな見識にしか見えないが、リストラの対象になった当時の陸軍からは深い恨みを買う。そして「とにかく宇垣だけは許せない」とする一派(反宇垣派)が陸軍内に現れ、彼らの「恨」が永田ら一夕会グループに悪用されていく。

宇垣一成は本当に先の見えた頭の良い軍人だったと思う。第一次大戦での欧州の経験を踏まえ、「これからの戦争では機械化が重要である」ことをいち早く見抜き、人間の首を切ってでもカネを浮かし、浮いた金で機械を買うことを断行しただけではない。これからの戦争は長期持久戦になるが、その持久戦を戦い抜くだけの資源が日本にはなく、大半の資源をアメリカからの輸入に頼っている以上、日本は何よりアメリカ(およびイギリス)との対立はさけねばならないという観点から国際協調を重視し、第一次大戦後に出来た東アジアをめぐる新秩序(いわゆるワシントン体制)を維持発展させようとすると点において、若槻礼次郎であり浜口雄幸であり幣原喜重郎であり西園寺公望と同じ「広い国際的視野」をもっていた。

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