失敗の本質 の感想
参照データ
タイトル | 失敗の本質 |
発売日 | 2013-08-02 |
製作者 | 戸部 良一 |
販売元 | ダイヤモンド社 |
JANコード | 登録されていません |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 軍事 » 軍事情勢 |
購入者の感想
この書は、ミッドウェー戦やガダルカナル戦など大戦中の6つのケーススタディーを通して、日本軍の組織的な敗北に迫るものであるが、本書を通して、読者は奇妙な既視感に陥るだろう。「そうだ、あの頃と何も変わってはいないではないか」と。
読み進める毎に、吸い込まれつつも、極めて悲観的になってしまった。読後感として、全体に通じる日本軍の問題は今日の日本全体を覆う問題に直結する。日本軍の情緒的でまたプロセスを重視し、年功序列型の昇級から来る問題は、今日の日本企業の問題へ、戦闘において自立性を極度に制限させられた現場と集権的中央の関係は、今日の地方と中央の関係へ、また日本軍部エリート創出の教育過程における問題性は現在の日本教育の問題に通じている。組織的には結局、何ら変わらずにここまで来たのかと疑いたくなる…。
例えば、当時日本陸軍の戦略文化としてあった「短期決戦」による「必勝の信念」を疑わない姿勢は、それが万一失敗した場合のコンティンジェンシープランの作成を拒んだ。それを作るように進言する声に対して、それは「必勝の信念」を疑う事であり、消極的で士気を低下させる行為だと言う。ここにあるのは「神話」の絶対性で、それを疑う事を許さない文化だ。この事は、現在でも形を変えて生じているのだ。最近の問題として、原発行政に同様の問題がある。原子力安全委員会委員をやっていた武田邦彦氏(現中部大学教授)は、原発を作る際の地震指針の不完全性を懸念し、念のために周辺住人にヨウ素剤とバイクを配布するように進言した。しかし「原子力は安全」がタテマエだからそれをやると、「原子力は安全でない」と言う事になるから出来ないと言われたという。…同じものを感じるのは私だけだろうか?
読み進める毎に、吸い込まれつつも、極めて悲観的になってしまった。読後感として、全体に通じる日本軍の問題は今日の日本全体を覆う問題に直結する。日本軍の情緒的でまたプロセスを重視し、年功序列型の昇級から来る問題は、今日の日本企業の問題へ、戦闘において自立性を極度に制限させられた現場と集権的中央の関係は、今日の地方と中央の関係へ、また日本軍部エリート創出の教育過程における問題性は現在の日本教育の問題に通じている。組織的には結局、何ら変わらずにここまで来たのかと疑いたくなる…。
例えば、当時日本陸軍の戦略文化としてあった「短期決戦」による「必勝の信念」を疑わない姿勢は、それが万一失敗した場合のコンティンジェンシープランの作成を拒んだ。それを作るように進言する声に対して、それは「必勝の信念」を疑う事であり、消極的で士気を低下させる行為だと言う。ここにあるのは「神話」の絶対性で、それを疑う事を許さない文化だ。この事は、現在でも形を変えて生じているのだ。最近の問題として、原発行政に同様の問題がある。原子力安全委員会委員をやっていた武田邦彦氏(現中部大学教授)は、原発を作る際の地震指針の不完全性を懸念し、念のために周辺住人にヨウ素剤とバイクを配布するように進言した。しかし「原子力は安全」がタテマエだからそれをやると、「原子力は安全でない」と言う事になるから出来ないと言われたという。…同じものを感じるのは私だけだろうか?