不安定からの発想 (講談社学術文庫) の感想

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参照データ

タイトル不安定からの発想 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者佐貫 亦男
販売元講談社
JANコード9784062920193
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 工学 » 航空工学・宇宙工学

購入者の感想

オリジナルは1977年刊行とあるから、30年以上前に著された本である。

著者は航空工学者にしてエッセイストとしても有名な、故佐貫亦男教授。
内容は、前半約3/4を使ってレオナルド・ダ・ビンチからライト兄弟に至る飛行機のパイオニアの略史と、そのなかでなぜライト兄弟が最初の成功者となりえたか、またなぜ兄弟がその後急速に没落したかについて、「安定性」をキーワードとして解説されている。
後半1/4は、工学上の安定、不安定の概念に関連する8編のショートエッセイ集である。

佐貫教授の著書を読まれたことのある方には容易に理解できると思うが、大変平易な語り口(その結果、厳密には正確でない場合もあるが)で「安定、不安定」の概念を説明されており、またそこから工学の専門家でない一般の読者にも有益な示唆に富んだ考察を述べられている。

おそらく、F-16に代表されるCCV(不安定に設計された飛行機を、コンピュータの支援によって安定させて飛行する技術であり、安定な設計に伴う様々なデメリットを解消できる)が実用化され始めた時期に、制御工学を専攻されていた立場から書かれたものと思われるが、その内容は従来の秩序が崩壊し、社会が不安定性を増したように思われる現代において、一層意義を増しているように感じる。
とくに、「安定」に安住することのリスクと、「不安定」のなかに自らの意思で操縦することの意義を説かれた部分は、まさに現在の社会状況に対して発せられた警告の様で、「先生、今の時代が見えていたのかなぁ?」と感じた。

「不安定」というタイトルは、工学的側面のみならず、社会における人間関係なども含めたものを示しており、飛行機にあまり興味のない一般の読者にとってもさまざまな考えるヒントが得られると思う。

個人的には、少年時代にその飄々とした語り口のエッセイを多読したものとして大変懐かしく感じ、未読であった本書を再刊してくださった講談社に感謝申し上げる。

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講談社から発売された佐貫 亦男の不安定からの発想 (講談社学術文庫)(JAN:9784062920193)の感想と評価
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