第一次世界大戦と日本 (講談社現代新書) の感想

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タイトル第一次世界大戦と日本 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者井上 寿一
販売元講談社
JANコード9784062882668
カテゴリ » ジャンル別 » 歴史・地理 » 歴史学

購入者の感想

戦勝国として先進国の仲間入りを果たそうとする日本の国際連合との関係、外交の文化化と軍部とのせめぎあい、政党政治の始まり、その頃の庶民の生活文化を概観したい人にはおすすめ。
大正時代の頃の写真も少ないが挿入され、イデオロギー色もないため、ひっかかりがなく一日ぐらいで読める。

題名通りの本で満足しました。第一次世界大戦、日本は連合国側で最終的には参戦します。実利としてはドイツ軍が保有していた青島を奪うこと、名目としてはアメリカ合衆国が中心となって喧伝していた人道的側面から、ということで極東の島国もこれに関与する事になります。
本書では外交、軍事、経済、社会、文化、と重要テーマごとに第一次世界大戦が及ぼしたインパクトを当時の新聞記事などを織り交ぜながら生々しく紹介しています。章の間で重複する記述も多々ありますが、むしろ本書のような内容の場合は、同じイベントであっても頻繁に参照してもらう方が、記憶が確かになるのでありがたかったです。
個人的に、最も興味深く拝読したのは経済および社会面です。戦争景気により成金が登場する、しかし戦争終結に伴い多くの成金が無一文になるなど社会混乱も激しく起こる。そして社会に大きな格差が生じ、政治家の暗殺など社会不安が増大する。しかし本書の最後に記載されているように、日本が国際連盟から脱退し、軍部が影響を強め真珠湾攻撃の前年をむかえるというのに、大衆消費文化に一度浸ってしまった上流婦人は高級デパートで浪費活動にいそしむ、ということで、何とも薄気味悪い気分になりました。
民主主義は素晴らしいし私はそれ以外の政体の国で生活したいとは全く思いませんが、ポピュリズム、そして他人に対する無関心さが引き起こす恐ろしさについては本書を読んで強く実感しました。

今年が開戦100年目ということで、第一次世界大戦に関する著作が我が国でも複数発行されている。本書のタイトルもその通りなのだが、本書では大戦後の日本を描いている。大戦を経て政治、外交、経済、社会が大きく変容する中での、日本への影響といったあたりが本書の主題と言えよう。

そして、本書では繰り返し、大戦後の日本と現代日本が似ているという主張や描写がなされている。これは、本書のみならず、近年の著者の新書全てがそうなのである。別に全く似ていないとは言わない。しかし、例えばだ、地方経済の疲弊で地方の労働者が都市に流入し貧困層を形成するのは、現代とWWI大戦後の日本だけでなく、他国でもあるいは、江戸末期にも共通している。外形的に類似することと、その背景や本質まで共通することは実は似て非なることが著者の作品では往々にして捨象されている点には留意が必要だろう。

一方で、こうした部分を除くと本書は読み辛い。外交、内政、経済、社会などに章建てを分けているが、結果として、1917年あたりからの日本史を繰り返し読まされる。各章には相互関係があるのだから、素直に何年かを単位とした章建てにした方が格段に読みやすかったろう。また、章によっては、1930年代までが守備範囲となっていて、それがWWIの影響なのか不明な部分も多い。
また、登場人物の注釈もないので、「国際会議屋」などと適当な仇名をつけられた外交官たちの歴史上の役割に何ら言及がないのも、新書の読者層を考えれば不十分と言わざるを得ない。

実は、WWIからの10年は全て大正期である。つまり、ポストWWI=大正時代=立憲政治=資本主義全開=中産階級勃興=格差拡大=都市の平和と地方の貧困あたりは当たり前に重なっている。この点で、WWIに依拠せず、たとえば立憲主義や中産階級を視点として当時日本をと捉える方が分かりやすいし、そうした著者は著者の作品含め近年多くある。

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