中国文明論集 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 中国文明論集 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 宮崎 市定 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003313312 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » 歴史・地理 |
購入者の感想
この本は日本の中国史研究の大スターである宮崎さんの主要論考のエッセンスをまとめた論集です。著者の宮崎さんは内藤湖南らの弟子すじに当たる人で、いわゆる「京大東洋史」の人です。この本はおなじく宮崎さんの弟子に当たるとなみさんが編集しました。
この本には戦前に書かれた論考も含まれているので、若干表現に硬さが感じられる部分が少なくありません。とはいえ、それがウザくてさじを投げるといったほどのものでもないと思います。
宮崎さんの中国史観の根幹となるもののひとつは、宋の時代が大きな転機となっているという考え方です。つまり、宋の時代には皇帝独裁権力が大幅に強化され、経済が発展し、また「文化復興」も行われたのですが、それは貴族が社会の実験を握っていた唐の時代からの飛躍を意味するものだと宮崎さんは考えています。これに関連して面白いことのひとつは、宋の時代に鉄の生産力が大幅に上昇したという点です。すでに唐末ごろに石炭をコークスに精製する技術が中国では発明されていたようですが、それを利用して宋の時代に鉄の生産が上昇しました。鉄というものは、その化学的仕組みはわたしにはよくわかりませんが、銅の生産を助けるそうです。当時中国では、正式な通貨には銅を用いていました。したがって鉄の生産の上昇は、銅の生産量の増加を促し、貨幣を流通量を増加させることによって、貨幣経済の勃興をもたらしたそうです。一方で、石炭を燃料として利用する方法が確立したことから、火力が上昇し、磁器を生産するための基盤も形成されました。ちなみに13世紀にモンゴル人がユーラシア大陸の全域を征服することができたのは、中国での鉄の産地を掌握していて、そこから征服に必要な武器を恒常的に補給することができたことにその一因があるそうです。
この本には戦前に書かれた論考も含まれているので、若干表現に硬さが感じられる部分が少なくありません。とはいえ、それがウザくてさじを投げるといったほどのものでもないと思います。
宮崎さんの中国史観の根幹となるもののひとつは、宋の時代が大きな転機となっているという考え方です。つまり、宋の時代には皇帝独裁権力が大幅に強化され、経済が発展し、また「文化復興」も行われたのですが、それは貴族が社会の実験を握っていた唐の時代からの飛躍を意味するものだと宮崎さんは考えています。これに関連して面白いことのひとつは、宋の時代に鉄の生産力が大幅に上昇したという点です。すでに唐末ごろに石炭をコークスに精製する技術が中国では発明されていたようですが、それを利用して宋の時代に鉄の生産が上昇しました。鉄というものは、その化学的仕組みはわたしにはよくわかりませんが、銅の生産を助けるそうです。当時中国では、正式な通貨には銅を用いていました。したがって鉄の生産の上昇は、銅の生産量の増加を促し、貨幣を流通量を増加させることによって、貨幣経済の勃興をもたらしたそうです。一方で、石炭を燃料として利用する方法が確立したことから、火力が上昇し、磁器を生産するための基盤も形成されました。ちなみに13世紀にモンゴル人がユーラシア大陸の全域を征服することができたのは、中国での鉄の産地を掌握していて、そこから征服に必要な武器を恒常的に補給することができたことにその一因があるそうです。