ブラックウォーター――世界最強の傭兵企業 の感想

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タイトルブラックウォーター――世界最強の傭兵企業
発売日販売日未定
製作者ジェレミー・スケイヒル
販売元作品社
JANコード9784861824968
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 軍事 » 軍事入門

購入者の感想

かつての傭兵部隊が、”個々の兵士が金を稼ぐ目的”で集団を形成していた要素が強いのに対し、ブラックウォーター社に代表される民間軍事会社は、営利目的の企業として”組織的に戦争をビジネスにしている”点が、今までと決定的に違うと感じた。

また、CIAやSISのような情報機関などが、政治的に重大な影響を及ぼす機密作戦を実施する場合に、作戦が失敗した場合の”政府の関与を否定できる”ように、秘密裏に元特殊部隊員などのカウンターテロリスト(テロ対策専門家)を雇うことはあったが、政府が”財政的に負担が軽減される(実際には肥大化しているらしいが)”という理由から、表立って民間へアウトソーシングしている点が、従来と異なる。

ブラックウォーターのCEOエリック・プリンス氏は、ハンサムで頭脳明晰、資産家の息子にして元海軍特殊部隊SEALS隊員という、男なら誰でも羨み女なら大抵は惚れてしまうようなステータスの男で、巧みに時流を掴みブラックウォーター社を政府の中枢にまで根を張る企業へと成長させてしまうことは、不謹慎かもしれないが企業経営の戦略家としても一流なのではないかと感じた。

しかし、このブラックウォーターの契約要員が、バクダッドで市民に対して無差別発砲殺傷事件を起こしたことによって流れが大きく変わってしまう。ブラックウォーターの契約要員にしてみればファルージャで同僚4名が惨殺された経緯があり、イラクの人々に対して不審感があったのかも知れないが、このような残虐行為を働いた者がイラクでも母国でも裁かれることなく国外退去できたというのは驚きだ。民間軍事会社の契約要員たちは、あらゆる法の適用除外者になっていたのだ。この点、日米地位協定にも通じるものがある。また同じ頃アフガニスタンで、プリンス氏がかつて在籍していた政府軍の海軍特殊部隊SEALSの隊員たちが、国内のリベラル派の糾弾により殺人罪に問われることを恐れ、作戦中に遭遇した民間人を解放したことから多数の犠牲者を出したことはとてつもない皮肉だと思う。

2001年以降、アメリカ大統領をブッシュが務めている間、本来は国家が行う事業の少なくない部分が民営化されていく。軍事・防衛にかかわることも含まれ、イラク戦争には、アメリカ政府と契約した数多くの民間企業が関わっている。本書で追及される「ブラックウォーター」もそういった会社の一つで、最初の契約はクリントン政権時代だが、ブッシュ政権下で急速に取引を増やし、2006年には6億ドル近い契約をしているとも言われている。戦地での要人の警護から治安維持など、軍事・防衛・警備における様々な事業を展開している。

「序章」で描かれたバグダッドにおける「血の日曜日」、ニスール広場事件の部分を読んだだけでも、頭がおかしくなりそうだ。この事件は、ブラックウォーターが2007年9月16日にバクダッドのニスール広場で起こしたものだが、酷いとしか言いようがない。無差別な発砲。しかも、極めて高性能な銃器が使用され、民間人17人が殺害される。ブラックウォーター側は、民間人にテロリストが混じっていたなど様々な理由を挙げるものの、イラク政府はもちろん、事件直後に駆け付けたアメリカ軍の調査でも、そのような事実は認められず、発砲は一方的なものとされている。しかし、ブラックウォーターは、雇用主である国務省から、イラクでもアメリカでも「免責」されている(その後の法整備がすすみ、被害者及び遺族のイラク人たちが、アメリカで裁判を起こし、2014年から裁判がスタートしている)。法整備が多少は行われているが実効性に疑問が残ることもあり、アメリカ・イラクでの、民間軍事会社の法的な責任はあいまいになりがちである。戦争が民営化されたことによる問題は、ある意味、この点に集約されるのかもしれない。

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