ヤノマミ (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルヤノマミ (新潮文庫)
発売日2013-10-28
製作者国分 拓
販売元新潮社
JANコード9784101281919
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

「ヤノマミの人々は…」という記述が多くあるが、
「本来人間は…」と全て読み替えられると思う。

嫉妬や喧嘩、争い事が絶えない。制裁もする。
外者を差別する。客人と分かると接待する。
物も女も盗む。
法螺話や艶話が好き。
女は良く働く、男は怠け者だがドヤ顔をする。
男女の情は、社会性を逸脱する。
幻覚剤を使い、炎や毒も操る。
収穫は祝う、奇祭・イベント好き。
人間以外の存在を創造する。
知識よりも智慧が必要。
死生観を持つ。
知ったり味わったら、後戻りできない…。

暴力的で美しく生きるなんて出来ない動物。
文明で少し美しく装うことが出来るようになったが、
本質はなにも変わっていないことを合わせ鏡のように本書から知らされた。
1万年前からの重みは、どう屁理屈をつけても覆せない。

DVD映像も併せて観たら書籍の知識が強烈な体験に変わりました。
対岸の火事的知識が、己の実体験に肉薄。
人間を描いた世界の名著や映画・哲学よりも、
単刀直入ストレートに人間そのものを感じさせられる。

「ヤノマミ」に書かれてあるエピソードの中で、とても興味深かったものを書き留めておきたい。

  国分氏とカメラマン氏は、ある日、村の広場で、村人全員を前にして歌をうたうことを強要されたと言う。困った国分氏は「赤とんぼ」を歌った。

  カメラマン氏は、たぶん十八番なのだろう、「島唄」を歌い上げた。すると、その夜、ヤノマミの人々がカメラマン氏のところにやってきて、「島唄」をもう一度歌え、歌えとやかましい。

  そうなのである。「島唄」が、ヤノマミ族の人々の心に刺さったのである。「島唄」はご存知のように、伝統的な沖縄の美しい旋律で成り立っている。言ってみれば、東南アジア的心性の上に咲いた楽曲である。これにヤノマミ族は反応したのである。

  この話を知って、すこし目眩のようなロマンを感じた。アマゾンの奥地に住む先住民たちはモンゴロイドである。何万年か前に、彼らの先祖は遙かアジアの地を旅立ち、凍てついたアリューシャン列島を通り、北米大陸に渡った。

  あるものは北米の最北部に残ってエスキモーに、またあるものはインディアンとして大陸に住み着いたが、またあるものはさらに南下を続け、中南米大陸に渡り、先住民となった。

  何万年も前に故郷を旅立ち、何万キロも離れたジャングルの奥地に住み着いた彼らの心に、今もなお、アジア的リリシズムに感応する感覚が残っているのではないか、と思うと、気が遠くなるようなロマンを感じてしまうのである。

NHKスペシャルなどを見た人にしか内容がわからない
本のタイトル&小説のような装丁だけど、

ヤノマミというのは、奥アマゾンの先住民である「ヤノマミ族」のことで、
この部族のもとで、4回(計150日)を過ごした記録が、この本である。

この本からは、いろいろなことを感じることができる。

たとえば僕たちは、あまり何も考えずに、毎日働きにでかけたり
するけれど、ヤノマミは、「食べ物がまだあるのに、どうして狩りに
行かなければならないのだ?」と言って狩りに行かなかったりする。

また、子どもが生まれたとき、母親一人の判断で、生まれたばかりの
子どもを、「精霊」としてそのまま天に返したりもする。

ヤノマミのような先住民たちが、「文明」と出会い、深く結び付くことで
何を得て、何を失っていくのか、(文明への依存と憎悪)

などなど。

ヤノマミの生活を知って、自分の生活、考え方を振り返ったりも
するだろうし、そもそも、生きるっていうのはどういうことなのか、と
考えたりもするだろうし、自分が良かれと思ってやっていることが、
もしかしたら不幸にしてしまうこともあるのかもしれない、などと
考えたりもした。

僕が、この本を、とてもいいな・・・と思ったのは、このディレクター&著者
である国分さんが、わからないことを、勝手に、「これは、こういうことだ」と
(学者のように?)決めつけて断言したりするのではなく、できるだけ自分の価値観を
排除して、客観的に描写しているところである。

ヤノマミの、「アハフー」という笑い声が、妙に心にのこった。

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