とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典) の感想
参照データ
タイトル | とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典) |
発売日 | 販売日未定 |
販売元 | 角川学芸出版 |
JANコード | 9784044072056 |
カテゴリ | 古典 » 日本の古典 » 古代・中世文学 » 古典文学研究 |
購入者の感想
『とりかへばや物語』は、一般には「性の倒錯」「猟奇的」「特異」などと説明されています。しかし(だから?)、とにかく読んで面白い古典です。それを、原文を交え、エッセンスを抽出して紹介しているのがこの本です。入門書としては良質です。特に関心したのが、「足摺(ず)り」の解説(170頁)。「足ずり」は『平家物語』の俊寛僧都でも有名な動作ですが、誤って「地団太を踏む」と説明されることが多いのですが、この本では『異本伊勢物語絵巻』を掲載して、正しい「足ずり」、すなわち、仰向けに寝て足で地面をする、ということがわかるようにしてあります。はっきりと注記してくれていればもっとよかったと思いますが。
猟奇的な物語、と思われがちな『とりかへばや物語』ですが、この本を読むと、人間の心理が深く描かれていて、やはり古典として残ったのにはそれなりの理由があることが分ります。父親があっさりと男女を取り替えて育ててしまおうと思うのも驚きですが、男性として育てられた女性に男性として結婚話が来た時に、母親が「相手の女性は奥手のようだし、男女のことがなくても大丈夫」という判断をして結婚させてしまうのはもっと驚きです。はらはらするうちに、二人は結局もとの性に戻ってめでたしめでたしとなるわけですが、その筋の運びに無理がありません。手軽にあまり有名でない古典を楽しめるのがいいですね。品のよい現代語訳ですし、先行する源氏物語などの影響関係もとても分りやすく書かれていますのでお勧めです。カバーの絵も、位の高い感じの女性の後姿で素敵です。