南朝の真実: 忠臣という幻想 (歴史文化ライブラリー) の感想
参照データ
タイトル | 南朝の真実: 忠臣という幻想 (歴史文化ライブラリー) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 亀田 俊和 |
販売元 | 吉川弘文館 |
JANコード | 9784642057783 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般 |
購入者の感想
今上へと繋がる皇統を溯ると北朝、それも一時期は傍流となった伏見宮系にたどり着く。しかし、明治憲法下、正統とされたのは南朝(当時は吉野朝といった)であり、現在も歴代に数えられるのは、ほぼ南朝の後醍醐(96代)、後村上(97代)、長慶(98代)、後龜山(99代)でしょう。皇国史観がとうに排除されたこの平成の世でも、われわれは、楠木正成をはじめとする忠臣をを讃え南朝を正統としています。一方、北朝を奉じた室町幕府は内輪もめばかりしていた弱体政権とのレッテルを貼られ、、なおかつ不道徳とのイメージ(歌舞伎の忠臣蔵の悪役が誰であるかを想起されたし)もつきまといます。
しかし著者は、本書においてサブタイトルにもあるように「南朝忠臣史観」を幻想とばっさり斬り捨てます。
著者が指摘するのは、大覚寺統内部の内輪もめ、公卿の後醍醐に対する批判、関東で活動していた北畠親房の足を引っ張った藤氏一揆などの相次ぐ分派活動、中期以降の主戦派と講和派の対立など、多岐にわたります。そして、従来はあまり顧みられていなかったこととして、初期の室町幕府は建武新政のある部分を忠実に継承しようとしていたことが述べられます。
ただ、本書が重点的に批判しているのは、南朝政権のていたらくよりも、史実を無視して、あるいはねじ曲げてまで勧善懲悪的に語られてきた、あるいはなお語られている幻想のなかの君臣像です。そして、新たな視点で南北朝時代をとらえ直します。一例を挙げれば楠木正成について、現実に即した彼の戦略眼を高く評価し、忠義よりも力量を評価すべきと述べて、イデオロギーでなく史実に即した正しい歴史観を持つべきだ、と説きます。
コンパクトながらかなり読み応えのある一冊です。
しかし著者は、本書においてサブタイトルにもあるように「南朝忠臣史観」を幻想とばっさり斬り捨てます。
著者が指摘するのは、大覚寺統内部の内輪もめ、公卿の後醍醐に対する批判、関東で活動していた北畠親房の足を引っ張った藤氏一揆などの相次ぐ分派活動、中期以降の主戦派と講和派の対立など、多岐にわたります。そして、従来はあまり顧みられていなかったこととして、初期の室町幕府は建武新政のある部分を忠実に継承しようとしていたことが述べられます。
ただ、本書が重点的に批判しているのは、南朝政権のていたらくよりも、史実を無視して、あるいはねじ曲げてまで勧善懲悪的に語られてきた、あるいはなお語られている幻想のなかの君臣像です。そして、新たな視点で南北朝時代をとらえ直します。一例を挙げれば楠木正成について、現実に即した彼の戦略眼を高く評価し、忠義よりも力量を評価すべきと述べて、イデオロギーでなく史実に即した正しい歴史観を持つべきだ、と説きます。
コンパクトながらかなり読み応えのある一冊です。